パネルディスカッションの進め方モデレーターの準備・質問例・台本

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カンファレンスのプログラムに、パネルディスカッションの枠を入れた。顔ぶれもそろった。ところが当日、パネリストが順番に自己紹介と自社の話をして、気づけば残り10分。会場からの質問も出ないまま、「いいお話でした」で終わる——パネルの枠でよく見る場面です。

パネルディスカッションの出来は、パネリストの話のうまさでは決まりません。どんな問いを、誰に、どの順番で投げるかで決まります。それを決めるのは、モデレーター(進行役)と主催者です。

この記事では、企画から本番までの準備、当日の進行と着地の順に、パネルの進め方をまとめます。後半の進行台本と質問例は、【 】の中を書き換えればそのまま使えます。トークセッションや対談の枠でも、進め方は同じです。

パネリスト・モデレーターと、ほかの登壇者の呼び方の違いは登壇とは?で整理しています。

パネルディスカッションが盛り上がらない3つの理由

盛り上がらないパネルは、たいてい次の3つのどれかに当てはまります。

1. 講演の寄せ集めになる

パネリストが1人ずつ、自社の紹介と取り組みを10分ずつ話す。3人いれば、それだけで30分です。これでは議論ではなく、短い講演が3本並ぶだけになります。

原因は、パネリストに「話すこと」を頼んで、「答える問い」を渡していないことです。話すことを頼まれた人は、講演の準備をしてきます。

2. 全員の意見が一致して終わる

「やはり現場の声が大事ですね」「おっしゃるとおりです」。全員がうなずき合って終わるパネルは、聞いていて心地よくても、客席に何も残りません。参加者がパネルを聞きに来るのは、1人の講演では聞けない考えの違いを見たいからです。

意見がそろうのは、顔ぶれが似ているか、問いが大きすぎるかのどちらかです。「〇〇は大事か」と聞けば、全員が「大事です」と答えます。

3. 1人が話しすぎる

話し慣れた人や役職の高い人に話が集まり、ほかのパネリストは相づちだけになる。モデレーターが遠慮して止められないと、パネルはその人の講演になります。

3つとも、当日のモデレーターの腕だけでは直せません。半分は企画の段階で、残りは本番までの準備で防ぐものです。

企画:テーマの立て方、人数と時間、顔ぶれの組み方

テーマは、答えが分かれる問いにする

テーマを「ユーザーコミュニティの可能性」のような名詞で立てると、話が広がりすぎて、誰も困らない一般論になります。テーマは、答えが人によって分かれる問いの形にしてください。

名詞のテーマ 問いにしたテーマ
ユーザーコミュニティの可能性 ユーザー会は、解約を減らす場か、紹介を生む場か
営業とマーケティングの連携 商談が足りないとき、先に変えるのは営業か、マーケティングか
これからの人材育成 新任マネージャーは、研修と現場のどちらで育つか
新しいツールの社内への広げ方 社内に広げるのは、トップの号令か、現場の成功例か

問いにすると、パネリストは「自分はこちらだと思う。なぜなら」と、立場で答えるようになります。立場が分かれれば、議論はモデレーターが押さなくても動き始めます。

主催者は、パネルのあと参加者に何を持ち帰ってほしいかも決めておきます。BtoBのカンファレンスなら、「自社ではどうするか」を考える材料です。製品の紹介はほかの枠に任せ、パネルでは問いに正面から答えてもらうほうが、主催者の印象も残ります。

人数は3人・45分を基本に、多くても4人まで

パネリストの人数 向いている時間 気をつけたいこと
2人 30分 対談に近くなる。意見の違いをはっきり出す
3人 45分 いちばん組みやすい。1人あたりの発言の時間も足りる
4人 60分 全員が同じ問いに答えると時間が足りない。問いごとに答える人を絞る
5人以上 おすすめしない 1人の発言が細切れになり、議論になる前に時間が終わる

パネリストは、多くても4人までにします。5人以上になると、モデレーターが全員に話を振るだけで時間がなくなり、パネリスト同士のやり取りまで届きません。どうしても5人以上に出てもらいたいときは、パネルを2つの枠に分けるか、テーマごとに登壇者を入れ替える形にします。

顔ぶれは「立場の違い」で組む

パネリストは、肩書きや知名度ではなく、テーマの問いに違う答えを持っていそうかで選びます。たとえば、次のような組み合わせです。

  • 進めている側と、迷っている側:始めて数年の会社と、検討を始めたばかりの会社
  • つくる側と、使う側:サービスを提供する会社と、その利用者
  • 大きな組織と、小さな組織:同じ課題でも、打てる手が違う
  • 現場の人と、決める人:担当者と、予算を持つ責任者

3人のうち1人は、主催者と違う意見を言ってくれそうな人を入れておくと、議論に厚みが出ます。全員が主催者と同じ意見だと、参加者からは宣伝の場に見えます。

カンファレンス全体のプログラムの組み方は、自社カンファレンスの立ち上げ方で扱っています。

モデレーターの役割と、本番までの準備

モデレーターの役割は、問いを投げ、議論をかみ合わせ、時間内に着地させることです。言い換えると、客席の代わりに聞く人です。参加者が「そこをもう少し聞きたい」と思ったところを、代わりに聞く。自分の意見を話す役ではありません。

そして、この仕事の大半は本番の前に終わっています。

打ち合わせで決める5つ

本番の1〜2週間前に、パネリストとモデレーターで30分の打ち合わせを持ちます。全員がそろわなければ、1人ずつでも構いません。決めるのは次の5つです。

  1. テーマの問いと、参加者に持ち帰ってほしいこと:主催者から伝え、全員でそろえる
  2. それぞれの立場:問いに、いまどう答えるか。一文で言ってもらう
  3. 話してよいこと、話せないこと:数字や取引先の名前を出してよい範囲。社内の確認が要るものは早めに
  4. スライドの扱い:紹介の1枚と、見せたい図があれば1枚まで。発表用の資料は作らないでもらう
  5. 当日の流れ:紹介の長さ、問いの順番、会場の質問の受け方、席の順番

2の「立場」を聞くと、意見がそろいそうな問いが前もって分かります。そろいそうなら、問いを変えるか、角度をずらす質問を用意しておきます。

打ち合わせで盛り上がりすぎると、本番で同じ話をくり返すことになり、話す本人の熱が下がります。聞くのは「どちらの立場か」までにして、具体的な話は本番に取っておいてもらいます。話が長くなりやすい人には、モデレーターの隣に座ってもらうと、合図を出しやすくなります。

問いの割り振り表をつくる

打ち合わせのあと、モデレーターは「どの問いを、誰に、どの順番で振るか」を1枚の表にします。当日はこの表を手元に置いて進めます。

問い 最初に振る人 次に振る人 ねらい
【テーマの問い】に、いまどう答えますか 全員(Aさんから) — 立場の違いを最初に見せる
うまくいかなかったのは、どの場面でしたか Bさん Cさん 具体の話で、客席の手元に寄せる
Bさんの話を聞いて、Aさんの会社ではどうですか Aさん — パネリスト同士をつなぐ
明日から一つだけ変えるなら、何から始めますか 全員(Cさんから) — 持ち帰りの一言で締める

コツは、最初に振る人を毎回変えることです。いつも同じ人から答えると、2人目と3人目は「前の方と同じです」になりがちです。役職の高い人を最後に回すと、ほかの人が話しやすくなります。押したときに飛ばす問いにも、印をつけておきます。

パネリストに、前もって3つの質問を送る

打ち合わせの前後に、次の3つをメールで聞いておくと、返事が当日の問いの材料になります。

【名前】様

当日の進行を組み立てるため、次の3つを教えていただけますか。一言ずつ、箇条書きで構いません。

・【テーマの問い】について、いまのお考え
・この件で、うまくいかなかったこと、意外だったこと
・会場の皆さんに、一つだけ持ち帰ってほしいこと

いちばん効くのは、2つめの「うまくいかなかったこと」です。うまくいった話は似通いますが、つまずいた話は人によって違います。

パネリスト側の準備は、セミナー登壇の準備の進め方と同じ考え方で進められます。違うのは、スライドの代わりに、問いに対する自分の立場を3つほど用意しておくことです。

当日の進行:冒頭から着地まで

冒頭で問いを示し、最初は全員に「立場」を聞く

始まって最初にするのは、今日の問いを一文で示すことです。続けて、流れ(紹介→立場→議論→会場の質問)と終わる時刻を伝えます。パネリストの紹介は、モデレーターが1人30秒で読み上げます。本人に任せると、1人3分、5分と延びていきます。

最初の問いは、全員に同じ問いで立場を聞きます。最初の発言を1人1分に収めると、そのあとのテンポが決まります。答えが分かれたら、その違いをそのまま次の問いにします。

意見がそろったら、角度をずらす

全員の答えがそろったときは、条件・時期・反対の立場・具体の4つのどれかで、問いの角度をずらします。いちばん使いやすいのは「具体に下ろす」です。考え方はそろっても、やったことは人によって違うので、違いが自然に出てきます。問いの例は、後半の質問例に載せています。

話しすぎる人は、要約して次へ渡す

1人の話が長くなったら、話の切れ目でモデレーターが一文に要約し、そのまま別の人に振ります。要約されると、話した本人も「伝わった」と感じるので、角が立ちません。

発言の少ない人には、「打ち合わせで〇〇とおっしゃっていましたね」と、前もって聞いた話を使って振ります。

議論が止まったときは、モデレーターが自分の見方を短く出しても構いません。ただし「Aさんはどうですか」と、すぐにパネリストへ返します。

時間は、残りから逆に見る

時間の管理で見るのは、残り時間です。45分の枠なら、残り15分で会場の質問に移り、残り5分で締めに入る。この2つの時刻だけは、議論が盛り上がっていても守ります。客席の後ろから残り時間を紙で見せてもらうよう、スタッフに頼んでおくと安心です。

会場の質問は、出ないときに備える

会場の質問は、最初の1問が出るまでがいちばん静かです。モデレーターが最初の1問を持っておき、手が挙がらなければ自分から聞きます。その答えを聞くあいだに、客席は質問を考えられます。参加者が多い会やオンラインの会では、申込みのフォームやチャットで前もって質問を集め、モデレーターが選んで読みます。1人への質問が続くときは、「ほかの方はいかがですか」と別の人にも振ります。

着地は、1人ずつの一言とモデレーターのまとめで

締めでは、パネリストに持ち帰ってほしいことを1人ずつ一言で言ってもらいます。最後にモデレーターが、今日の問いにどんな答えが出たかを一文でまとめ、司会に返します。

まとめでやりがちなのは、「答えは一つではない、ということですね」で終わることです。これでは客席は何も持ち帰れません。違いが出たなら、何で違ったのか(会社の規模、取り組みの段階、決める人の位置など)を言葉にして渡すと、参加者は自社がどちらに近いかを考えられます。

パネルの前後で司会が読むつなぎの言葉は、セミナーの司会台本の書き方にまとめています。

進行台本の例:45分と30分

45分(パネリスト3人)の時間割

経過時間 段階 モデレーターがすること
0〜3分 開始 今日の問いを一文で示し、流れと終わる時刻を伝える
3〜5分 紹介 パネリストを1人30秒ずつ紹介する
5〜10分 立場の表明 全員に同じ問いを振る。1人1〜2分
10〜20分 論点1 答えが分かれたところを掘る。具体を聞く
20〜30分 論点2 角度をずらす。パネリスト同士をつなぐ
30〜40分 会場の質問 2〜3問を受ける。出なければ用意した1問から
40〜45分 締め 1人ずつの一言と、モデレーターのまとめ

イベント全体の進行表にはパネルの枠を1行で入れ、中の時間割はモデレーターが持つと、スタッフとの役割が分かれます。進行表の組み方はイベント進行表の作り方にまとめています。

30分(パネリスト2〜3人)の時間割

経過時間 段階 モデレーターがすること
0〜2分 開始と紹介 問いを示し、パネリストを1人20秒で紹介する
2〜6分 立場の表明 全員に同じ問いを振る。1人1分
6〜20分 論点 論点を1つに絞り、具体を聞いて違いを掘る
20〜26分 会場の質問 1〜2問を受ける
26〜30分 締め 1人ずつの一言と、まとめ

30分で論点を2つ持とうとすると、どちらも浅くなります。論点は1つと決めてください。

モデレーターのせりふ

開始

ここからは、パネルディスカッションです。モデレーターを務めます、【所属】の【名前】です。

今日の問いは、「【テーマの問い】」です。この問いに、立場の違う3人にお答えいただきます。最初にお一人ずつ立場を伺い、そのあと議論をして、最後の10分で会場の皆さんからのご質問をお受けします。終わりは【時刻】の予定です。

立場の表明

では最初に、お一人ずつ一言で伺います。【テーマの問い】に、いまならどう答えますか。【名前】さんからお願いします。

答えが分かれたとき

いま、【Aさん】と【Bさん】で答えが分かれました。どこで分かれたのか、もう少し伺います。

要約して、別の人に渡す

ありがとうございます。つまり、【要約】ということですね。【Cさん】、いまの話は【Cさん】の会社ではどうですか。

会場の質問へ移る

話は尽きないのですが、ここで会場の皆さんからのご質問に移ります。挙手をいただければ、マイクをお持ちします。

手が挙がらないとき

手が挙がるまでのあいだ、私から一つ伺います。【用意しておいた質問】。

締め

最後に、お一人ずつ伺います。今日の話から、会場の皆さんに一つだけ持ち帰っていただくとしたら、何でしょう。【名前】さんからお願いします。

(全員のあと)今日の問いには、【出た答え】という答えが出ました。違いが出たのは、【何で違ったか】のところです。ご自身の会社がどちらに近いか、考えるきっかけにしていただければと思います。パネリストの皆さん、ありがとうございました。

そのまま使える質問例(問いの型ごと)

質問には、ねらいごとに型があります。型ごとに2〜3問ずつ手元に持っておくと、当日の流れに合わせて選べます。

立場を聞く(最初に)

ねらい:立場の違いを、最初に客席へ見せる。

  • 【テーマの問い】に、一言で答えるとどちらですか
  • この1年で、考えがいちばん変わったのはどこですか
  • よく言われることと、現場の実際が違うのはどこですか

具体を聞く(話が大きくなったとき)

ねらい:客席が自社に置き換えられる場面に下ろす。

  • 始めて最初の1か月で、実際に何をしましたか
  • うまくいかなかったことを一つ挙げるとしたら、何ですか
  • そのとき社内で反対したのは誰で、どう説明しましたか

角度をずらす(意見がそろったとき)

ねらい:そろった意見から、違いを掘り出す。

  • もし予算や人が半分だったら、同じことをしますか
  • 3年前の自分が同じことを聞かれたら、何と答えていたと思いますか
  • この考えに反対する人がいるとしたら、どんな理由でしょう
  • 答えはそろいましたが、優先する順番も同じですか

つなぐ(パネリスト同士をかみ合わせる)

ねらい:1人ずつの発言を、やり取りに変える。

  • いまの【Aさん】の話を聞いて、【Bさん】の会社で違うところはありますか
  • 【Bさん】から【Aさん】に、一つ聞いてみたいことはありますか
  • お二人の話は、どこまでが同じで、どこから違うのでしょう

客席に寄せる(会場の質問の前に)

ねらい:客席が「自分の場合」を考えるきっかけをつくる。

  • これから始める会社が、最初にやるとしたら何がいいですか
  • 会場には【参加者の立場】の方が多いのですが、その立場なら何から始めますか
  • 社内で説明するとき、どんな言い方をすると通りやすかったですか

締める(最後に)

ねらい:持ち帰るものをはっきりさせる。

  • 明日から一つだけ変えるとしたら、何から始めますか
  • 今日の話を一言でまとめると、何でしょう
  • 1年後にまた同じ問いを話すとしたら、何が変わっていてほしいですか

よくある質問

モデレーターと、司会・ファシリテーターは何が違いますか?

司会(MC)はイベント全体の進行役、モデレーターはパネルの枠の中の進行役です。司会は開会から閉会まで、枠と枠のあいだをつなぎます。小さなセミナーでは、司会がモデレーターを兼ねることもあります。ファシリテーターは、会議やワークショップのように、参加者全員が話し合う場の進行役です。パネルは壇上の議論を客席に見せる場なので、モデレーターは参加者の代わりに聞く役になります。

モデレーターは、社内の人と外の人のどちらに頼むのがいいですか?

テーマに詳しく、パネリストと対等に話せる人なら、どちらでも構いません。社内の人は、参加者に何を持ち帰ってほしいかをよく分かっています。ただ、自社の製品の話に寄せたくなるので、問いが宣伝に見えないかを先に確かめてください。外の人に頼むときは、打ち合わせに主催者も加わり、参加者の顔ぶれと持ち帰ってほしいことを伝えます。

オンラインのパネルでは、何を変えますか?

発言の順番を、いつもより細かく指名します。オンラインでは、間があくと2人が同時に話し始めたり、全員が黙ったりするので、毎回名前で振ってください。参加者からの質問はチャットで受け、モデレーターか補助の人が選んで読みます。時間の合図は画面越しだと見えにくいので、パネリストとモデレーターだけの連絡用のチャットを用意しておきます。

まとめ

  • 盛り上がらないパネルの原因は、講演の寄せ集め・意見がそろう・1人が話しすぎるの3つ。多くは企画と本番までの準備で防げる
  • テーマは名詞ではなく、答えが分かれる問いで立てる。顔ぶれは立場の違いで選ぶ
  • 人数は3人・45分が基本で、多くても4人まで。4人なら問いごとに答える人を絞り、5人以上は枠を分ける
  • モデレーターは客席の代わりに聞く人。打ち合わせで5つを決め、問いの割り振り表をつくる
  • 意見がそろったら、条件・時期・反対の立場・具体の4つで角度をずらす
  • 着地は1人ずつの一言と、何で違ったかを言葉にするまとめで

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