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登壇準備の進め方依頼を受けてから当日までにやること

登壇が決まりました。日程は1か月先。「まだ時間があるから、資料は来週から」と思ったまま2週間が過ぎ、気づけば前日の夜にスライドを直している——多くの人がこの道を通ります。
準備が間に合わないのは、時間が足りないからではありません。着手する順番が逆だからです。この記事では、登壇の依頼を受けてから当日を終えるまでを時系列に並べ、それぞれの時点で何を決めるべきかを整理します。社内のセミナーでも、社外のカンファレンスでも、手順は同じです。
主催者の立場で「誰に何を話してもらうか」を決める側の話はセミナーの登壇者を社内から立てるにまとめています。この記事はその裏返し、話す側の実務です。
スライドから作り始めると、当日に間に合わない
登壇準備というと、ほとんどの人がまずスライドを開きます。これが最大の失敗です。
理由は単純で、スライドは考える道具として遅すぎるからです。1枚のレイアウトを整えるのに10分かかる。20枚あれば、それだけで3時間以上が消えます。そして構成を変えたくなったとき、作り込んだ分だけ捨てられなくなる。「せっかく作ったから」で不要なページが残り、話は長くなり、時間を超過します。
もうひとつの問題は、スライドを作っている間、自分が何を伝えたいのかを考えていないことです。手は動いているので仕事をしている感覚はある。けれど中身は決まっていない。前日になって「で、結局この話の結論は何だっけ」と気づくのは、たいていこのパターンです。
順番はこうです。
- 聞き手と目的を確認する(主催者に聞く)
- 話の骨子を決める(紙かテキスト)
- 骨子を通しで声に出してみる
- それからスライドを作る
- 通しリハーサルで削る
3までを1〜2時間で終えてしまえば、残りは作業です。逆に3を飛ばすと、4と5で何倍もの時間を溶かします。
まず主催者に4つ確認する(引き受けた直後・15分)
引き受けた直後、記憶が新しいうちに主催者へ確認します。あとから聞くと「今さら聞きにくい」空気ができて、想像で埋めることになります。聞くのは4つだけです。
1. 誰が聞きに来るのか
役職・職種・その人たちが今困っていること。「マーケティング担当者」では粗すぎます。「これから施策を立ち上げる人」なのか「もう回していて改善したい人」なのかで、話す内容は丸ごと変わります。ここが曖昧なまま作ると、どちらにも刺さらない一般論になります。
2. 主催者はこの回で何を得たいのか
集客が目的なのか、既存顧客との関係づくりなのか、商談の入口なのか。主催者の目的と自分の話がずれていると、良い話をしても「今回の趣旨とは違った」と言われます。目的が分かれば、締めの一言をそこに寄せられます。
3. 持ち時間と質疑の扱い
「30分」と言われたとき、それが質疑込みなのかは必ず確認します。質疑10分込みの30分と、質疑別の30分では、作る量が3割違います。あわせて押したときに切っていいパートを先に主催者と合意しておくと、当日が楽になります。
4. 前後に誰が何を話すか
同じイベントの別の登壇者と内容がかぶるのは、実際によく起きます。プログラムをもらって、隣の枠のテーマを見ておく。かぶりそうなら主催者に言えば調整してもらえます。当日に気づくと、もう動かせません。
この4つを聞くと、主催者からは「よく考えてくれている登壇者だ」と見られます。ついでに、次も声がかかりやすくなります。
3週間前:話の骨子を1枚に落とす
ここが準備の本体です。時間をかけるべきは、ここだけと言ってもいい。
やることは、伝えたい一文を決め、そこに至る3ブロックを並べること。それだけです。
伝えたい一文を先に書く
聞き手が帰り道に「今日の話、要するに◯◯だったな」と言うとしたら、その◯◯は何か。これを一文で書きます。書けないうちは、まだ話す準備ができていません。
コツは、当たり前のことを書かないことです。「イベントは目的が大事」では誰も動きません。自分が実際にやってみて意外だったこと、教科書と違ったことを書くと、聞き手の顔が上がります。
3ブロックに割る
一文が決まったら、そこへ連れていく道筋を3つに割ります。数を増やさないこと。人は一度の話で3つ以上は持ち帰れません。
よく機能する型は次の3つです。
- 問題 → 打ち手 → 結果(自分の取り組みを話すとき)
- よくある誤解 → 実際 → だからどうする(知見を渡すとき)
- before → 転機 → after(変化を語るとき)
型に流し込んだら、各ブロックに具体を1つずつ入れます。数字、実際にあった場面、やってみて失敗したこと。抽象的な主張3つの話は退屈ですが、具体が3つ入るだけで急に聞ける話になります。
声に出して通す
骨子ができたら、スライドなしで、声に出して最後まで話してみます。5分でも10分でも構いません。ここで詰まるところが、話の穴です。頭では繋がっていたのに口に出すと繋がらない箇所が必ず出てきます。そこを直すのは、この段階なら5分で済みます。
話す言葉そのものの組み立て方はプレゼンテーションライティングとは、原稿として書き起こす手順はスピーチライティングとはで詳しく扱っています。
骨子が固まったあと、本番でどう届けるか——間の置き方や声の落とし方、スライドを消す判断——はスピーチの演出にまとめました。
2週間前:スライドは骨子が固まってから作る
骨子が固まってはじめて、スライドに手をつけます。ここでの原則は2つです。
1枚1メッセージ。1枚のスライドで言うことは1つに絞ります。情報を詰め込んだ資料は、聞き手が読み始めた瞬間に話を聞かなくなります。読ませるか聞かせるか、どちらかにしてください。
話す内容をスライドに書かない。スライドは話の見出しであって、原稿ではありません。文字を全部載せると、自分がそれを読み上げるだけの時間になります。手元にメモが必要なら、ノート欄に書けば済みます。
枚数の目安は、1枚あたり1〜2分。30分の枠なら15〜25枚に収まります。これを大きく超えているなら、話す量が多すぎるサインです。
配布資料を求められた場合は、登壇用とは別に作ってください。登壇用は削ぎ落とす方向、配布用は補足を足す方向で、要求が正反対だからです。同じファイルで両立させようとすると、どちらとしても中途半端になります。
1週間前:通しリハーサルで見るのは3つだけ
リハーサルは必ず最初から最後まで通しでやります。部分的に確認するやり方では、いちばん重要な情報——実際に何分かかるのか——が分かりません。
見るのは3点です。
1. 時間
ほぼ全員が、初回の通しで予定時間を超えます。1.2〜1.5倍になることも珍しくありません。本番はさらに伸びると考えてください。緊張して説明が増えるからです。持ち時間の9割で収まるまで削ります。
2. 順番
通してみると「この話、先に言っておかないと通じない」という箇所が見つかります。ブロックの入れ替えで直ることがほとんどです。
3. 削るところ
超過分をどこから削るかを決めます。判断基準は「伝えたい一文」に効いているかどうか。面白いけれど本筋に効かない脱線から順に落とします。自分の話を自分で削るのは難しいので、誰かに聞いてもらって「どこが分からなかったか」を言ってもらうと早く進みます。
このとき、話し方の細かい指摘は受けないほうがいいです。1週間前に「声が小さい」「手が動きすぎ」と言われても直りません。直らないことを気にしながら本番を迎えるだけです。直すなら中身、それも構成に絞ってください。
前日と当日:会場で確認すること、逃げ道の用意
前日にやることは、実はほとんどありません。新しいスライドを作らない、構成を変えない。前日の変更は、リハーサルを経ていない未検証の変更なので、当日の事故になります。
やるとしたら、冒頭の1分と締めの1分だけを声に出して確認すること。ここが決まっていると、途中で崩れても立て直せます。
当日、会場に着いたら見るのは次の点です。
- 接続の確認(自分のPCが映るか、変換アダプタは足りるか)
- 登壇位置から手元が見えるか(ノート欄が見えない配置は珍しくありません)
- 時間の見え方(残り時間がどこに表示されるか。分からなければ自分の時計を机に置く)
- 質疑の仕切り(誰がマイクを回すか、時間が来たら誰が止めるか)
あわせて、逃げ道を先に決めておきます。
答えられない質問が来たときの引き取り方(「その点は個別にお話しさせてください」)、時間が押したときに飛ばすページ、スライドが映らなくなったときにどう続けるか。この3つを事前に決めてあるだけで、当日の緊張はかなり下がります。逃げ道があると分かっていると、人は落ち着いて話せます。
オンライン登壇の場合は、これに入室の15分前テスト(画面共有・音声・カメラの高さ)が加わります。とくに画面共有は、共有する画面を間違える事故が最も多い場面です。共有するウィンドウ以外は事前に閉じておいてください。
終わったあとの30分が、次につながる
話し終えて席に戻る前に、やっておくと効くことが2つあります。
ひとつは、その場で聞き手と話すこと。登壇直後は、参加者が最も声をかけやすいタイミングです。壇上から降りたら会場の後方に立っておく、オンラインなら「このあと質問チャットに残ります」と伝える。ここで交わした一言が、後日の商談につながります。参加者をどう次につなぐかの設計はイベントを商談につなげる導線設計にまとめました。
もうひとつは、当日中に振り返りを3行書くこと。どこで聞き手の反応が良かったか、どこで反応が消えたか、どの質問が出たか。翌日には忘れます。これを残しておくと、2回目の登壇の準備が半分の時間で済みます。
出た質問は特に価値があります。聞き手が本当に知りたかったことのリストそのものなので、次回はそこを本編に組み込めばいい。登壇を重ねている人ほど話が良くなるのは、才能ではなくこの蓄積の差です。
セミナーそのものの企画や集客の設計はセミナーの企画から集客までを参照してください。
よくある質問
原稿は丸暗記したほうがいいですか?
丸暗記はおすすめしません。一箇所つまずくと全体が止まりますし、暗記した文章は読み上げの声になって聞き手に伝わりにくくなります。覚えるのは各ブロックの最初の一言と、伝えたい一文だけで十分です。あいだは自分の言葉で話したほうが、内容が同じでも届き方が変わります。ただし冒頭の30秒と締めの30秒は、言葉を固めておいてください。ここだけは崩れると立て直しにくい場所です。
緊張して頭が真っ白になるのが怖いです。対策はありますか?
真っ白になるのは、次に何を言うか思い出せなくなる状態です。対策は暗記量を増やすことではなく、思い出す手がかりを場に置いておくことです。スライドの見出しを次の話の入口にしておく、手元に3ブロックの見出しだけ書いた紙を置く、この2つで大半は防げます。それでも詰まったら、黙って一度水を飲んでください。話し手が思うより、その沈黙は短く感じられています。
質疑応答が苦手です。何を準備しておけばいいですか?
想定質問を10個書き出し、そのうち答えにくい3つだけに回答を用意しておいてください。答えやすい質問は準備しなくても答えられます。準備が要るのは、価格の話、他社との比較、まだ結果が出ていない取り組みについての質問です。そして、分からないことは「分かりません、確認します」と言っていい。曖昧なまま答えるほうが、その後の信頼を損ないます。答えられない質問への引き取り方をひとつ決めておくだけで、質疑の怖さは大きく減ります。
まとめ
登壇の準備は、才能ではなく順番の問題です。
- スライドから作り始めない。骨子 → 声出し → 資料 → 通しリハの順で進める
- 引き受けた直後に主催者へ4つ確認する(聞き手・目的・持ち時間と質疑・前後の登壇)
- 骨子は「伝えたい一文」+3ブロック。各ブロックに具体を1つ入れる
- スライドは1枚1メッセージ、1枚1〜2分。話す内容は書かない
- リハーサルは必ず通しで。見るのは時間・順番・削るところの3点だけ
- 当日は逃げ道(答えられない質問・押したとき・映らないとき)を先に決めておく
- 終わった当日に3行の振り返り。出た質問が次回の中身になる
hytenは、登壇の中身そのものを一緒につくります。伝えたい一文の掘り起こしから、構成、話す言葉の設計、リハーサルの伴走まで。詳しくはプレゼンテーションのプロデュースをご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。セミナーやカンファレンスを主催する側の設計はカンファレンス・セミナー・コミュニティのプロデュースで扱っています。
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