講演依頼・登壇依頼への返信引き受ける前の確認と、承諾・お断りの例文

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登壇の依頼は、ある日ふいに届きます。取引先から、業界の勉強会から、お客様のユーザー会から。「今度のセミナーで、30分ほどお話しいただけませんか」。うれしい反面、どう返せばいいのか、そもそも引き受けていいのかで手が止まります。

返事の文面は、例文を見ればすぐに書けます。むずかしいのはその手前です。引き受けるかを決めるために、何を聞いておくか。会社の名前で話すなら、社内で誰に何を確かめるか。ここを飛ばして引き受けると、あとから「録画が公開されるとは聞いていなかった」「上司に話していなかった」といった行き違いが起きます。

この記事は、講演や登壇を頼まれた側に向けて書いています。講演依頼・登壇依頼・講師依頼と呼び方は違っても、返し方は同じです。返事の前に主催者へ確かめること、社内の確認、引き受ける・条件を相談する・断るときの返信の例文、返事のあとにやることの順にまとめます。主催者の側で登壇をお願いする文面は、登壇依頼のメール文例にまとめています。

返事を急ぐ前に、主催者へ確かめること

BtoBイベント100本以上に関わるなかで、登壇者に頼む側を何度も経験してきました。主催者が助かる返事は2つです。早い返事と、聞きたいことがまとまった返事。目安は、連絡を受けてから2〜3日のうちです。

ただ、中身を知らないまま「ぜひ」と返すのは早すぎます。依頼のメールには、日時とテーマしか書かれていないことがよくあります。引き受けるかを決めるには、次のことが分かっている必要があります。

確かめること 理由 聞き方の例
頼まれた理由 期待されている話と、自分が話せることのずれが分かる 「どのようなお話を期待していただいているか、伺えますか」
形式と持ち時間 1人で話す講演と、パネルの一席では準備の量がまるで違う 「お一人でお話しする枠でしょうか。質疑は持ち時間に含まれますか」
聞き手 誰に向けて話すかで、話せる中身が決まる 「参加される方の立場と、人数の見込みを教えてください」
日程と締め切り 当日のほかに、打ち合わせや資料を出す日も空けておく必要がある 「事前の打ち合わせや、資料の締め切りの予定はありますか」
謝礼と交通費 謝礼のない場も多い。会社としての扱いを決めるのに要る 「謝礼や交通費の扱いも、あわせて教えていただけますか」
録画と資料の公開 あとから公開される話は、社内の確認が要ることが多い 「当日の録画や資料は、後日公開されますか」
告知の載せ方 社名と肩書きで告知に出るなら、会社としての登壇になる 「告知には、社名と肩書きも載りますか」

いちばん大事なのは1行目です。主催者がその人に頼むのには、たいてい理由があります。「勉強会での話が良かった」「この取り組みを社内で進めた人だから」。頼まれた理由が分かれば、何を話せばいいかの半分は決まります。理由を聞いてみて自分の経験と合わないなら、それは断るか、話す範囲を相談する合図です。

形式ごとに何を期待されているか(講演・パネル・モデレーターの違い)は、登壇とは?で整理しています。聞き手や持ち時間は、引き受けたあとで改めて詳しく聞くことになります。ここで知りたいのは、引き受けるかを決められる程度のことです。前後の登壇者や当日の機材のように、準備のために聞くことは返事のあとで構いません。

引き受けるかは、3つの問いで決める

答えがそろったら、次の3つで考えます。

  1. 自分が話す意味があるか:その話題について、自分で手を動かした経験があるか。人から聞いた話しか持っていないなら、ほかに話すべき人がいる
  2. 聞き手に役立つ話ができるか:聞き手の立場と、自分の経験が重なっているか
  3. 準備にかける時間があるか:話す時間の何倍も準備にかかる。当日だけ空いていても足りない

3つとも「はい」なら引き受ける。迷うものがあれば、条件を相談してから決める。はっきり「いいえ」があるなら、断るほうが主催者のためになります。合わない話や、準備の足りない話を聞かされて困るのは、聞き手と主催者だからです。

会社を代表して登壇するときの、社内の確認

会社員が社外で話すとき、本人は「個人の経験を話すだけ」のつもりでも、聞き手はそうは受け取りません。告知に社名と肩書きが載り、壇上で「◯◯社の◯◯さん」と紹介されれば、その人の話は会社の話として聞かれます。だから、主催者に返事をする前に、社内で確かめることがあります。

  1. 上司:引き受けてよいか。業務として出るのか(勤務時間の扱い、交通費、出張の申請)
  2. 広報:社名や会社のロゴを使ってよいか。告知文の確認、録画や記事として残るときの扱い
  3. 法務や、情報を管理する部署:話してよい範囲。まだ公表していない数字、お客様や取引先の名前、契約に関わる話
  4. 謝礼の受け取り方:会社で受けるか、個人で受けるか。副業や兼業についての社内の決まりに触れないか
  5. 肩書きとプロフィールの書き方:社内で決まっている表記があるか

小さな会社なら、上司ひとりに聞けば済むこともあります。大事なのは、誰に確かめたかを残しておくことです。告知を見た人から「聞いていない」と言われたとき、話が早く片づきます。

上司には、依頼の中身をそろえて相談する

社内の確認がもたつく理由の多くは、相談する側の情報が足りないことです。「セミナーで話してほしいと言われたんですが」だけでは、上司も判断できません。次をまとめて見せると、その場で決まりやすくなります。

  • 主催者と、どんな集まりか(誰が来るか)
  • 日時、形式、持ち時間
  • 話すテーマと、会社の名前を出すか
  • 録画や資料が公開されるか
  • 謝礼と交通費の扱い
  • 会社にとっての意味(お客様との関係、業界での認知、人の採用など)

最後の1行が、上司の判断にいちばん効きます。会社の時間を使って出るなら、「なぜ出るのか」を一文で言えるようにしておきます。

話してよい範囲は、3つの線で決めておく

話してよい範囲は、準備に入る前に決めます。原稿ができてから削ると、話の筋が崩れるからです。

  • 数字:社外に出してよいのは、すでに公表したものだけ。出せないなら「前の年の2倍」「半分の時間で」のような比べ方にする
  • 名前:お客様や取引先の名前は、許可がなければ出さない。業種と規模で言い換える
  • これからのこと:まだ決まっていない計画や、公表前の話は出さない

迷うところは、資料の段階で広報や上司に見てもらうと安心です。経営者が自分の会社の代表として話すときも、考え方は同じです。確かめる相手は少なくなりますが、お客様の名前と、まだ公表していない数字には、同じように線を引いておきます。

引き受けるときの返信(承諾の例文)

引き受けると決めたら、返信に入れるのは4つです。お礼、引き受けること、聞きたいこと、今後の連絡のしかた。聞きたいことを箇条書きで添えると、主催者は一度の返信で答えをまとめられます。

件名:「◯◯」ご登壇の件(お引き受けいたします)

◯◯様

お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。

このたびは、◯月◯日の「◯◯」へのご登壇のお声がけをいただき、ありがとうございます。喜んでお引き受けいたします。

準備を進めるにあたり、次の点を教えていただけますと助かります。

・参加される方の立場と、人数の見込み
・持ち時間と、質疑の時間の扱い
・当日の録画や資料を、後日公開されるか
・事前の打ち合わせと、資料の締め切りの予定

告知に使うプロフィールや写真が必要でしたら、お知らせください。当日まで、どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

依頼のメールに返信するなら、件名は届いたままでも構いません。主催者はほかの登壇者とも同じ件名でやり取りしているので、まるごと変えると探しにくくなります。届いた件名の後ろに(お引き受けいたします)と足すだけでも、開く前に返事の中身が伝わります。

条件を確かめてから決めたいときの返信

すぐに決められないとき、いちばんよくないのは、黙って待たせることです。主催者は、返事が来るまで次の手を打てません。決めきれないなら、いつまでに返すかだけ先に送ります。

件名:「◯◯」ご登壇の件(◯月◯日までにお返事いたします)

◯◯様

お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。

◯月◯日の「◯◯」へのご登壇のお声がけ、ありがとうございます。前向きに考えております。

社内での確認がありますので、◯月◯日(◯)までにお返事いたします。あわせて、判断のために次の点を教えていただけますでしょうか。

・どのようなお話を期待していただいているか
・形式(お一人でお話しする枠か、パネルか)と持ち時間
・当日の録画や資料を、後日公開されるか
・謝礼と交通費の扱い

お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

謝礼のことは聞きにくいものですが、ほかの項目と並べて書けば角が立ちません。主催者の側も、聞かれることを前提にしていることが多いものです。

条件を相談して引き受けるとき

答えを見て、「この条件ならできる」というときもあります。持ち時間を短くしてほしい。1人で話すよりパネルのほうが合う。録画は社内の決まりで公開できない。こうした相談は、できないことではなく「こうならできる」で書くと通りやすくなります。

件名:「◯◯」ご登壇の件(条件のご相談)

◯◯様

お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。

ご登壇の件、詳しく教えていただきありがとうございました。ぜひお受けしたいと考えております。

そのうえで、2点ご相談させてください。

・持ち時間:◯◯のお話でしたら、◯分ほどにまとめたほうが中身の濃いお話ができそうです。◯分の枠でお受けすることはできますでしょうか
・録画:社内の決まりで、録画を後日公開することができません。当日の配信のみでしたら、お受けできます

どちらも難しいようでしたら、遠慮なくおっしゃってください。別の形でお力になれることがないか、あわせて考えます。

(署名)

相談の返信を送ったら、答えが来るまでは引き受けたことにはなりません。主催者から「その条件で大丈夫です」と返ってきた時点で、改めてお礼と、引き受けることを一言で返しておきます。

断るときの返信と、次につながる一言

断ることは、失礼ではありません。合わない依頼を無理に受けて、準備の足りない話をするほうが、主催者にも聞き手にも迷惑をかけます。

断るときに気をつけるのは3つです。

  1. 早く返す:主催者は、次の人を探す時間が要る。断ると決めたら、その日のうちに返すくらいでいい
  2. 理由は短く:日程が合わない、テーマが合わない、社内の事情。詳しく書く必要はない
  3. 次の機会を残す:また声をかけてほしい、話せる人を紹介できる、別の形なら協力できる

やんわり断るつもりで、返事をぼかすのは逆効果です。「検討します」のまま日が過ぎると、主催者は待つしかありません。断るなら、断ると分かる言葉で書きます。

件名:「◯◯」ご登壇の件(お返事)

◯◯様

お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。

このたびは、「◯◯」へのご登壇のお声がけをいただき、ありがとうございました。

大変ありがたいお話なのですが、◯月◯日はすでに別の予定が入っており、今回はお受けすることができません。せっかくお声がけいただいたのに、申し訳ありません。

◯◯のテーマには関心がありますので、また機会がありましたら、ぜひお声がけください。

(署名)

社内の確認を経て断るときは、理由を「社内の事情」とだけ書けば足ります。テーマが自分に合わないときは、話せる人を紹介すると、断りの返事が主催者の助けになります。

件名:「◯◯」ご登壇の件(お返事)

◯◯様

お世話になっております。◯◯株式会社の◯◯です。

先日はご登壇のお声がけをいただき、ありがとうございました。検討いたしましたが、社内の事情により、今回はお受けすることができません。お待たせしたうえに、ご期待に沿えず申し訳ありません。

なお、◯◯のテーマでしたら、社内にもっと詳しくお話しできる者がおります。ご関心があれば、本人に確認のうえでおつなぎいたします。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

人を紹介するときは、本人の了承を得てから名前と連絡先を伝えます。先に名前を出すと、紹介された人が断りにくくなるからです。

返事のあとにやること

引き受けたら、返信を送った日のうちに3つ済ませておきます。

  1. 予定を押さえる:当日だけでなく、打ち合わせ、資料の締め切り、リハーサルの日もカレンダーに入れる
  2. 社内に伝える:上司と、必要なら広報に、引き受けたことと告知が出るころを伝える
  3. 主催者に頼まれたものを早めに返す:プロフィール、写真、肩書き。告知は、登壇者からの返事を待って止まっていることが多い

謝礼がある場合は、請求書が要るか、振込先は会社か個人かも、このときに聞いておきます。源泉徴収などの税の扱いは、経理の担当か税理士に確かめてください。

そのあとは準備です。準備はスライドではなく、話の骨子から始めます。主催者への細かい確認から当日までの流れは、登壇準備の進め方に時系列でまとめました。話す言葉そのものの組み立てはプレゼンテーションライティングとは、原稿に書き起こす手順はスピーチライティングとはで扱っています。

断った場合も、できることがあります。その集まりに、参加者として一度顔を出してみることです。どんな聞き手が来る場なのかが分かれば、次に頼まれたとき、ずっと判断しやすくなります。

よくある質問

講演依頼への返事は、いつまでにすればいいですか?

依頼のメールに返事の期限が書いてあれば、その日までに返します。書いていなければ、2〜3日のうちが目安です。社内の確認に時間がかかるときは、お礼と、いつまでに返すかだけを先に送ってください。期限が分かっていれば、主催者はほかの準備を進めながら待てます。

電話や立ち話で頼まれたときも、メールで返したほうがいいですか?

はい。口頭で「ぜひ」と答えたあとでも、メールで改めて返事をしておくと安心です。日時、形式、持ち時間、録画の有無を文字で残しておけば、「そう聞いていた」「聞いていない」の行き違いを防げます。承諾の例文にある箇条書きを、そのまま使えます。

謝礼のない依頼は、引き受けてもいいですか?

謝礼のない登壇は珍しくありません。業界の勉強会、取引先のユーザー会、共催のセミナーなどです。決め手は謝礼の有無より、話す意味があるかと、準備にかける時間があるかです。会社員なら、業務として出るのかを上司と決めておいてください。謝礼がなくても、交通費の扱いだけは聞いておくと、あとで困りません。

「代表で登壇する」とは、どういうことですか?

会社や団体を代表して、壇上で話すことです。社名と肩書きで紹介されるので、話の中身はその組織の考えとして受け取られます。個人の経験を話すつもりでも同じです。代表で登壇すると決まったら、話してよい範囲(数字・お客様の名前・これからの計画)を、社内で先に決めておいてください。

まとめ

  • 返事は2〜3日のうちに。決めきれないときは、いつまでに返すかだけ先に送る
  • 返事の前に主催者へ聞くのは、頼まれた理由・形式と持ち時間・聞き手・日程と締め切り・謝礼と交通費・録画と資料の公開・告知の載せ方
  • 引き受けるかは、話す意味があるか・聞き手に役立つか・準備の時間があるかの3つで決める
  • 会社の名前で話すなら、上司・広報・法務に確かめ、話してよい範囲(数字・名前・これからのこと)を先に決める
  • 承諾の返信には、聞きたいことを箇条書きで添える。条件の相談は「こうならできる」で書く
  • 断るときは、早く・理由は短く・次の機会を残す一言を添える
  • 返事のあとは、予定を押さえ、社内に伝え、準備は話の骨子から始める

引き受けたあとの準備は、登壇準備チェックシート(無料)を上から順に使うと抜けがありません。話す中身づくりから一緒に進めたいときは、hytenの登壇・プレゼンのプロデュース(Impact Pitch Produce)にご相談ください。

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